身近なエネルギーハーベスティング技術(2)-1

身近なエネルギーハーベスティング技術を使った製品シリーズの第二回目は、誰もが見たことがある工事灯を取り上げます。
工事灯のことをエネハ製品として取り上げられることはあまりないのですが、仕組み的には立派なエネハ製品ですので取り上げました。

工事灯はホームセンターなどの他、アマゾン、モノタロウなどのECサイトでも簡単に買うことができます。今回はアマゾンで以下の商品を買ってみました。プライム会員ですので次の日には到着しました。購入時の価格は1,338円でした。安い!

ミズケイ 役立~ツ 工事灯 バイスなし 赤色

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07SPPPG27/ref=ppx_yo_dt_b_asin_title_o01_s00?ie=UTF8&th=1

三角コーンの上に被せられていて、夜暗くなるとピカピカ光る”あれ”です。てっぺんに70mm×40mmの太陽光発電パネルが取りつけられている”あれ”です。太陽光発電が当たり前になってしまっているため、今さら一次電池駆動では売れそうにありません。これだけ大量に普及すると電池交換は面倒くさくなってしまう良い例だと思います。IoTセンサーもこれぐらい普及すればエネルギーハーベスティング技術も拡がるのですが。。

当然ですが家で使う予定はないので、早速分解してみました。非常に簡単な作りでほとんど回路なしです。どうりで安い。

光発電パネルと二次電池との間には特に回路はなく直結されていて、直接充電されるようです。二次電池はニッケル水素電池800mAhで単三電池2個分の大きさです。ニッケル水素電池の特徴についてBingAIあらため”Microsoft Copilot”に聞いてみました。

・ ニッケル水素電池とは電池の中にニッケル水酸化物と水素吸蔵合金が使用されている電池のことです。ニカド電池のカドミウムを水素吸蔵合金に置き換えた構造であり、一度エネルギーを取り出し切っても充電すればまた使用可能な二次電池です。
・ 長所は有害物質であるカドミウムを含まないこと、ニカド電池よりも容量密度が高いこと、内部抵抗が小さく大電流放電が可能なこと、低温特性に優れ低温時の電圧降下が少ないことなどです。
・ 短所は自己放電率が高いこと、負極材料が高価であること、メモリー効果があることなどです。ただし最近のニッケル水素電池はセパレータの素材や負極の水素吸蔵合金の改良により、自己放電率やメモリー効果を減らすことに成功しています。
・ ニッケル水素電池は、その出力の高さから、ハイブリッドカーに用いられています。身近なところでは、テレビ用リモコンやコードレス掃除機など家庭用品の電源としても働いています。リチウムイオン電池に少しずつ活躍の場を奪われつつありますが、ニッケル水素電池の持つ高い性能は様々な分野で役立っています。

さらにニッケル水素電池が工事灯に使われる理由について聞いてみました。

・ 大電流放電が可能で高い出力を持つ電池です。工事灯は、明るく長時間点灯する必要があるため高出力の電池が適しています。
・ 低温特性に優れ低温時の電圧降下が少ない電池です。工事灯は屋外で使用されることが多く寒い環境でも安定して動作する電池が必要です。
・ 充電可能な二次電池であり繰り返し使用できる電池です。工事灯は頻繁に使用されるため、使い捨ての一次電池よりも経済的で環境に優しい電池が望ましいです。
・ 有害物質であるカドミウムを含まない電池です。工事灯は、廃棄やリサイクルの際に、カドミウムを含むニカド電池よりも安全で簡単に処理できる電池が好ましいです。

ニッケル水素電池の短所を改良したのが三洋電機が開発して販売していた、現在はFDKが製造しパナソニックから販売している eneloopです。ニッケル水素電池が工事灯が使われる理由としてあげた4点は、IoTとしてセンサーをばらまくときの重要なポイントとそのまま重なります。実際、既存の一部のIoT機器にはeneloopが使われています。高出力である点は通信モジュールを動作させる場合にも有利なためで、発電→充電なしの一次電池としての使われることも多いです。

ほとんど回路はないと書きましたが、LEDが実装されている基板の裏側にはICと積層セラミックチップコンデンサ(MLCC)とチップ抵抗器が1個ずつ実装されていました。またピカピカ赤く光る6個のLEDに加えて、光らない見た目はLEDのような部品(写真の黄丸)が実装されていました。これは光量・照度を検知するフォトダイオードで、これによって周囲が暗くなったことを検知し、夜だけLEDを光らせるのだと思います。

作りとしては 【光発電パネル】-直結-【リチウム水素電池】-直結-【LEDとその制御IC】 ととても単純明快な構成です。ただ単にLEDを光らせるだけなのでIoT製品ではありませんが【LEDとその制御IC】を【センサーと通信モジュール】に変換するだけで電池レスIoTセンサーに化けます。しかもかなり大容量の電池を積んでいるので、いろいろなことができそうな気がします(LTE通信ができればかなり用途が広がりそうな気がします)。今回工事灯を分解してみて、IoTモジュールもこれぐらいおもっいきり単純化して、値段を安くすることも重要であることを実感しました。

ついでに太陽光発電パネルの特性も測定してみたのですが、文が長くなってしまったので、次回にまわしました。

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