身近なエネルギーハーベスティング技術(2)-2

身近なエネルギーハーベスティング技術を使った製品シリーズの第二回目(2)は、工事灯の太陽光発電パネルの発電特性を調べてみた結果について書いていきたいと思います。

写真のように縦の4本線が入った「セル」らしきものが8枚実装されています。まっすぐに揃わずちょっとずつ傾いているのはいかにもと言った感じでしょうか?裏側からは赤と黒のリード線が出ており光を当てると電位差が生じていました。
このパネルを直射日光下に置き、赤と黒のリード線を可変抵抗器(10Ωから1MΩ変化可能)を接続し、可変抵抗器両端の電圧を測定することによりこのバネルの発電特性を評価しました。

測定結果を次の図に示します。横軸が変化させた抵抗値で縦軸が電圧の測定値です。横軸は対数表示になっていることに注意してください。

抵抗値が大きくなるほど電圧が大きくなっていて、特に100Ω前後で急激に上昇することがわかります。グラフの一番右側は抵抗値1MΩでほぼ絶縁状態ですので、この値をオープン(回路が開いている=絶縁)抵抗と呼び、このパネルで直射日光下では約4Vであることがわかります。
中学の理科で習うオームの法則(V=IR)と電力を求める式(P=VI)から電力Pと抵抗Rの関係は以下のようなグラフとなります。

電力は抵抗150Ωで最大となり約60mWを示しています。この抵抗値は太陽光パネルがもつ内部抵抗に等しくなることが知られており、発電した電力を効率良く取り出し蓄電するために重要なファクターです。抵抗がこの値から上下に大きくずれるとせっかく発電した電力を有効利用できないことを示しています。このグラフの横軸を抵抗から電圧に変換すると次のようなグラフになります。

発電電力は約3Vで最大となり、上記したオープン電圧4Vの約75%になっています。多くの太陽光パネルではオープン電圧の75%から85%で電力が最大となることが知られていて、このパネルはよくある普通のパネルであることがわかります。最大電力となる電圧は気象条件(照度)によって変化するため、メガソーラーなどでは常に最適条件で電力を取り出せるように最適動作点を追従する機能MPPT(Maximum Power Point Tracking)機能が備えられています。アマゾンで1,338円で買える工事灯にはもちろんそんな機能は含まれていません。

この工事灯ではニッケル水素電池を2.4V前後で充電する回路になっていますので、最適電圧からは少しずれていますが、直射日光下では50mW以上の発電電力で充電できることがわかります。高価な回路を使わず効率良く充電できる仕組みになっており感心しました。

内蔵されているニッケル水素電池の容量2.4V-800mAhは電力量(エネルギー)表示とすると 2.4[V]×800[mAh] ⇒ 1.92[Wh] ⇒ 6912[J] と書き換えられ(1Wh=3600J)ます。一方50mWで1時間発電したときの電力量(エネルギー)は 50mW×3600[sec] ⇒ 180[J] ですので、単純計算では空充電から満充電をするためには 直射日光下では 6912[J]÷180[J] ⇒ 38.4時間 の充電時間が必要と計算されます。

実際には充電回路で損失しますのでさらにその倍程度の時間(80時間ぐらい)が必要となります。工事灯の置き場所にも依りますが、晴れの日に1日4時間程度直射日光が当たるとしても20日以上満充電まで時間がかかる計算となります(実際には曇り、雨があるのでさらに日数がかかる)。

一晩中LEDをピカピカ点灯させるのに必要な電力量を測定していないので何とも言えませんが、意外と余裕のない設計だなというのが感想です。

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