身近なエネルギーハーベスティング技術(1)

今回は既に広く身近に普及しているエネルギーハーベスティング技術を使った商品の紹介(1)です。

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TOTOウォッシュレット エコリモコン

駅や大型店舗などの公共施設内のトイレで、下の写真のようなウォッシュレット用リモコンを見たことがないでしょうか?今時のリモコンスイッチとは異なり「パッチン、パッチン」音を鳴らしながらスイッチングする一見レトロなスイッチが特徴です。

このリモコンの商品名は「エコリモコン」と言うらしくTOTOのホームページには以下の記載があります。以下引用。

『エコリモコン(電波式リモコン)』は施設管理の方による電池交換、壁裏の電源工事が不要なリモコンです。
スイッチを押すたびにリモコン自体が発電し(蓄電はしません)、電波信号を飛ばすしくみです。
*発電するリモコンのため、蓄電池や乾電池などは使用していません。
https://qa.toto.jp/faq_detail.htm?id=161904&category=1760&page=1

通常のリモコン(下写真)とは見た目がかなり違い銀色で目立つので、思い出された方もいらっしゃるのではないでしょうか?

TOTOのホームページには、通常のリモコンは通信手段として「赤外線式」を使っていると記載されているのに対し、エコリモコンでは「電波」を使っているとなっています。おそらく消費電力の小さいBluetooth Low Energy(BLE)などを使っているものと推定されますが、詳しい情報を見つけることができなかったので正しくはわかりませんでした。Zigbeeを使っているとの情報をいただきました。

このリモコンは、スイッチを押す力・動作を電磁誘導によって微小電力に変換する技術を使っており、エネハ業界ではEnOceanスイッチと呼ばれることがあります。EnOceanとはSiemensから2001年にスピンアウトした会社で、発電スイッチの基本特許を永らく保有しており(既に失効)電池レススイッチのパイオニアです。超低消費電力の無線規格も立案、規格化しておりEnOcean通信と呼ばれることがあります。TOTOのエコスイッチもEnOcean通信なのかもしれません。

写真のようにTOTOブランドの商品ですが、実際には日本国内の大手部品メーカーであるミツミが開発し製造しています。CEATEC2014では大々的にアピールしていました。約10年も前になるのですね。
https://xtech.nikkei.com/dm/article/EVENT/20141009/381672/

スイッチを押したときの発電電力量は大きくても~0.5mJ程度と非常に小さいもので「今押したよ」という情報しか無線通信するだけしかできません。腱鞘炎になるほど連打してもスマホの電池を充電することは不可能です。その前にスイッチが壊れるでしょう。

電池フリーの無線スイッチであるEnOceanスイッチは、非常に古い建物が多く壁内の配線工事が難しいヨーロッパでは一定の市場を獲得しましたが、日本国内ではほとんど普及していません。普及していない理由はいろいろありますが、電池フリー&無線通信という不確実な技術を使っているので、より完全を求める市場では受け入れられにくいためかもしれません。少なからずのクレームが来ることは容易に想像できてしまうのでなかなか難しいでしょう。ウォッシュレットの場合は、何かの間違いで押してもシャワーが起動しなくてももう一回押してくれることが期待できるので、致命的なクレームにならないと判断したのだと思います。実際10年近く使われているのですからクレームも多くないのでしょう。

なぜ公共施設のトイレのウォッシュレットに広く採用されてきたのか正確な理由はもちろんわかりませんが、電池交換をする役割の作業者をなかなか手配できないなどの業界の事情があるのではないかと想像します。ニーズ、シーズ、様々な事情がうまく合致して、新しい技術が商品化される典型的な事例だと思っているので、身近なエネルギーハーベスティング技術第一弾として紹介しました。

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